お願いだから、好きだと言って!!
「蓮兄は多分貸してくれないし、絃ちゃんから借りたいんだ」
そんな可愛らしい笑顔で言われたら、断ることが出来ない。
心臓がドキドキしすぎて、逆に止まってしまいそうだ。
「わ、わかったよ」
「やったぁ、絃ちゃん大好き!」
「……っ」
"俺たちを落としてみろ"
そう言われて、住む家を確保するために頑張っている私。
なんとか好きになってもらおうとたかが数週間だけど、頑張ってきた。
その中で、もし好きになってもらえたら……
その先は何も考えていなかった。
恋愛に無縁だった私は、こんな時にどうしたらいいのかわからない。
「じゃ、じゃあ辞典取ってくるね。返すのは帰ってからでいいから……」
「うん、ありがと!」
私の心のモヤモヤなんて知るわけのない、目の前の葵くんは、今も可愛い笑顔で笑ってる。
私にも、こんな可愛さと余裕があったらいいのに。
小走りで教室に戻った私は、英和辞典を持ってきて葵くんに手渡した。