都会人の付き合い方
そんな事を思い出しながら時は流れて、葬式が終わった。麻那美のお母さんの亡骸は焼かれてしまった。
その煙は空へ昇り、どれかの雲に混じる。きっとあの雲は何処かに雨を降らし、地上の何処かに生きる植物を育てるのだろう。
生前のような慈愛深くなく、育てるのは人ではなくて名も無き草だとは、どこか哀れだとも思う。


…本当に哀れなのは、父子家庭となってしまった瀬川家かもしれないが。



「…お母さん、いつ帰ってくるの?教えてよ……」
「寄り添ってやれなかった……!」
その人柄に支えられた人達は口々に負の感情を孕んだ言葉を並べたてる。
来る日も来る日も涙を流し、悲しみに暮れる。

そして……まだ悲しみを背負うには弱過ぎる心は、砕けてしまった。
砕けた心の持ち主は、言葉を失ってしまった。
目は腫れて、何処を見ているか分からない。
…いや、何処も見ていないのだろうか。

「あと少しで世界が終わってしまう」
そう思わせるような、絶望的な表情を…麻那美はしていた。


そんな麻那美に、僕は何が出来る?
大切な人を亡くしたことがない僕に…何が出来るのか。そもそも何かをしていい資格を持っているのか。

懸命に言葉を取り繕って慰めようとする僕は、麻那美から見てどう映るのか。

心の痛みを知らない僕。
僕は麻那美の為に、何をしてやるのが最善なんだろう。
残念ながら、子供の僕には分からなかった。
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