都会人の付き合い方
「えへへ…一悟君抱っこしていい?」
僕は短く「どうぞ」と答えた。

箒の柄のように細い腕が僕を抱きとめる。
貧相な体でも、心に宿る愛情はヒシヒシと感じた。
「あー…麻那美の弟も欲しかったなぁ。男の子って可愛いね」
そう感想をこぼしていると、僕の母が「すぐにこの子みたいな男の子は糞ガキになるから」と野次を飛ばした。
僕の両親も、麻那美のお母さんも笑った。
「糞ガキ」の意味を知らない僕以外の大人達の世界は一気に和やかになる。
ああ…置いてけぼり喰らってるな。
そう思っていると。
「ねぇ一悟君?ちょっと耳を貸してくれない?」
急に、僕と大人達のズレが元に戻る。
いや、戻ってきたというより…無理やり引っ張られた感じもするが。
「いいですよ」
そう言って、僕は右耳を差し出す。
麻那美のお母さんは、両手を添えて、内緒話をするように、小さな声で言った。
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