都会人の付き合い方
…え?

聞き返そうとする前に、麻那美のお母さんは添えていた両手を下ろした。
そして、「眩い」と錯覚するくらいの笑顔を見せた。
こんな笑顔を見せられたら何も言えなくなる。

「うん」

ようやく絞り出た声は、こんなにも間抜けだった。

「じゃあ、そろそろ帰りましょ?あんまり長居すると迷惑になっちゃう」
「私はホントに平気なのに…」
何だかあっという間に時間が流れていっている気がする。
時間が目に見える物ならば、僕の目にはどう映るんだろう。
きっと、流星のように一気に僕の身体を掠めて行くんだろうな…。

「それじゃ、お邪魔しましたー…」
「いえいえ。一悟君も…バイバイ」
「…さようなら」

そう言い、高永家全員で病室のドアを閉める。
ドアを完全に閉め切る前まで、部屋の向こう側の人は手を振っていた。
僕は慌てて振り返す。

そして、病室と廊下に仕切りが作られた。
僕らは、この四角で仕切られた部屋の中にいる麻那美のお母さんを見たのはこれで最後になった。
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