君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
 リビングのソファにかけて、膝を抱え込むようにして座っていると、征治さんが、ココアを入れたマグカップを渡してくれた。一口飲むと、ほっとしたぬくもりが体内に染み渡っていく。

「津九音市は、市としては、歴史の浅い街だという事はご存じですよね?」

「研究学園都市として、昭和36年に閣議決定されて、その後、整備された、というのは聞いています」

「津九音山そのものの歴史は古いですが、研究学園都市として整備が始まったのは戦後以降です、当時、候補としてあがっていたのは、富士山麓、赤城山麓、そして那須高原、最終的に、津九音山麓のここ、現在の津九音市として、複数の町村が合併する事に決まったわけですが、都市開発には、黄金川財閥が深く関わっているのです。首都機能の一部移転、都市として、土地の力を最大限に引き出す為に、聖獣が召喚されました。それが、青龍、白虎、朱雀、玄武、そして麒麟です。召喚があったのは、1985年、そして、召喚を行ったのは、黄金川財閥先代、黄金川志門様、奥様である麻耶様、私の父、そして、当代朱雀の父と、当代玄武の母です。召喚以降、守護聖獣管理部門は、都市の守護聖獣の維持、管理を行ってきました」

 ……一気に、伝奇モノっぽい話になってきて、私はなんと言っていいのか言葉を探した。

 母が、そんな重大事に関わっていたなんて、思いもよらなかったし、ましてや、津九音市の成り立ちにそんな事があったというのは、驚きだった。

「奥様が、あなたを連れて出て行ってからも、機能していたんです、守護聖獣管理部門は、……ですが……代替わりが重なり、結束が、ゆるんでしまったんでしょうね、あちこちほころびが出ているんですよ、津九音山の力が、制御しきれずに、暴走した力が、魔獣化して現れる事があります。守護聖獣の力を使って、それらを狩り、鎮める事が、守護聖獣管理部門の役割です」

「今、白虎はどういう状態なんでしょう」

「奥様がご存命のうちは、まだ良かったんですが……、今は、野生化寸前のようですね」

「……野生化、すると、どうなるんですか?」

「最終的には、魔獣化します」

「魔獣……ですか」

 名前だけ聞いても、だいぶ凶悪そうな感じがする。
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