君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
 その夜、私は悪夢を見た。生きながら、白虎に食べられる夢だった。

 征治さんは言った。

 聖獣の継承、それは、聖獣そのものに打ち勝つ事。

 礼門も、征治さんも、聖獣に対峙し、打ち勝った。

 それは、命がけの継承の儀式だったという、……私に、それができるのだろうか。

 聖獣に敗北するという事は、自身の死でもあるという。

 しかし、聖獣にその身を与える事で、皮肉な事に魔獣化は防げるという。

 私にできる事は二つに一つ。

 聖獣に勝ち、主となる。

 もしくは、自分の身を聖獣に捧げる事で、魔獣化を一時抑え、別の候補者をたてる。

 どちらの方法をとるにしても、私は、聖獣と向き合わなくてはならないという事だ。

 明け方、目を覚ますと、ひどい寝汗をかいていた。それが不快で、私はシャワーを浴びようと、バスルームのドアを開けた。

 ……言い訳をすると、寝起きでぼんやりしていたのと、まだ夜も明ける前で、恐らく就寝中であろう征治さんが起きていて、なおかつシャワーを浴びたところだなんて、予想できなかったのだ。

 つまり。

「……ッ!」

 私が、脱衣所へ続くドアを開けるのと、征治さんがバスルームから出てきたのが一致してしまったのは、本当に、運が悪かったとしか言えなかった。

 衝撃的な事があると、人は無言で、かつ、ぱっと動けない。また、一度固定した視線をすぐに動かせない。

 征治さんは、全裸だった。

 夜明け前だし、私が、征治さんが起きているだろうと思わなかったように、多分、征治さんも、私が起きてくると予想しなかったのだろう。互いが無防備で、考え無しだった。

「ご、ごめんなさいッ!」

 私は、あわてて脱衣所から出て、ドアを閉めた。
 今更、もう一つある方のバスルームへ行く気にもなれなかったし、そのまま自室に戻り布団をかぶった。

 バクバクと、驚きで鼓動が早い。

 男性の、全裸を、見てしまった……。

 眼福、とか、言ってはいけないのだろうけれど、征治さんの体は、鍛えられて逞しく、ダビデ像のようだった。その、ショッキングな光景は、私に、悪夢を一瞬忘れさせた。
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