君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
 しばらく布団の中でまんじりとして、リビングへ行くと、征治さんが朝食の用意をしていた。朝陽が差し込み、眩しいリビングダイニングで、炊飯器からは、炊きたてのご飯の香りが漂い、キッチンでは、魚を焼いているのか、換気扇の轟音と、グリルから、魚の焼けるいい臭いがしてくる。

「征治さん、さっきは……」

 言いかけると、征治さんの顔が耳まで朱くなっているのが見えた。

「申し訳ありませんでした、素子さん、私、やっぱり、バスルームは、主寝室側を使わせてもらう事にします……」

 昨晩、バスルームは二つあるものの、掃除の手間もあるし、声を掛け合えばいいですよね、と言って、キッチン側のバスルームを共有する提案をしたのは私の方だった。
 思えば、それが今朝の事故の元だったわけで……。
 私も、顔を染めながら、

「はい、すみませんでした……」

 と答えた。

「いえ」

「いや、こちらこそ」

 そう、二人で赤面して言い合っていると、玄関ドアの鍵を開ける音がした。礼門が一緒に朝食をとるためにやってきたのだろう。玄関の扉を開ける音がして、私は、そそくさとキッチンからダイニングへ移動した。

「おはよう! 姉さん、よく眠れた?」

 扉を開けて、朝から元気な礼門がやって来たけれど、私と征治さんの雰囲気に違和感を感じたのか、キッチンの征治さんに言った。

「……征治、君、姉さんに何かしてないよね?」

 ガラガラガラがっしゃーーーーん! と、キッチンから何かが落ちる音がして、驚いて私がカウンターキッチンの中を覗き込むと、カトラリーの入っている引き出しのトレイごと取り落としたらしく、床にナイフやフォークが散らばっていた。

「す、すみません、大丈夫ですから、若と素子さんはダイニングテーブルへ、すぐに朝食をお持ちします」

 あわてて落ちた物を拾い集めている征治さんを手伝おうと、私もキッチンに入り、しゃがみこむ。

「こっちは私がやるので、征治さんは、テーブルの方をお願いします」

「す……すみません、素子さん」

 私と征治さんのやりとりを見て、ますます礼門がいぶかしむ。

「……姉さん、本当に、何もなかった? ……まあ、二人とも、成人した男女だし、僕が何か言う権利はないけどさあ」

「「何もないです!」」
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