君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
私と征治さんがユニゾンで答えると、ますます礼門はじっとりした目でこちらを一瞥した。
……何もなかったって、信じて、もらえた……か、な? いや、実際何もなかったし。
今朝の『あれ』は、事故だし、どちらかというと、私の過失というべきで、しかも、この場合、被害者は征治さんになるんじゃなかろうか?
落ちたカトラリーを拾い集め、シンクの洗い桶にまとめていれたところで、征治さんから声をかけられた。
「後は私がやるので、素子さんは朝食、とっちゃって下さい」
「あれ? 征治さんは一緒ではないんですか?」
「私はお二人の給仕をしてからいただきますから」
「だったら、三人で一緒に朝食にしませんか? せっかくですから」
私は、一人で食事をする事が多かった。母と一緒に食事をする事も、もちろんあったけれど、忙しい母とはスレ違いがちで、回数はそう多くは無い。
一家だんらんへの憧れ、というセンチメンタルではないけれど、征治さんを給仕に立たせての食事は何となく居心地が悪いのだ。
「礼門も、それでいい?」
「僕も、いつもそう言ってるんだけどね、征治、僕と顔を付きあわせての食事が嫌みたいでさ」
皮肉っぽい様子は無いが、多分征治さんがそう言って聞かなかったのだろう。礼門も、チャンスとばかりに私の言葉にのってくれた。
「若と、素子さんがそこまでおっしゃるのなら……」
そして、三人でダイニングテーブルにつき、朝食が始まった。
「……なんか、征治は、姉さんの言うことは素直に聞くんだね」
礼門がぼそっと言った。
「それは若の気のせいです、被害妄想です」
征治さんがずずっと味噌汁をすすった。
「そぉかなぁあ〜」
礼門が魚の身をほぐしながら返す。
私は、こういう風に、数人で食卓を囲むという事があまり無かった。思ったより疎外感を感じないのは、礼門のせいだろうか。
私の方は、まだ、どことなく壁を作ってしまっているけれど、礼門は、その壁をやすやすと乗り越えて来てくれる気安さがあった。
「姉さん、今笑った?」
「ゴメン、なんか、二人のやりとりがおもしろくて」
私は素直に答えると、礼門は少しほっとしたように言った。
……何もなかったって、信じて、もらえた……か、な? いや、実際何もなかったし。
今朝の『あれ』は、事故だし、どちらかというと、私の過失というべきで、しかも、この場合、被害者は征治さんになるんじゃなかろうか?
落ちたカトラリーを拾い集め、シンクの洗い桶にまとめていれたところで、征治さんから声をかけられた。
「後は私がやるので、素子さんは朝食、とっちゃって下さい」
「あれ? 征治さんは一緒ではないんですか?」
「私はお二人の給仕をしてからいただきますから」
「だったら、三人で一緒に朝食にしませんか? せっかくですから」
私は、一人で食事をする事が多かった。母と一緒に食事をする事も、もちろんあったけれど、忙しい母とはスレ違いがちで、回数はそう多くは無い。
一家だんらんへの憧れ、というセンチメンタルではないけれど、征治さんを給仕に立たせての食事は何となく居心地が悪いのだ。
「礼門も、それでいい?」
「僕も、いつもそう言ってるんだけどね、征治、僕と顔を付きあわせての食事が嫌みたいでさ」
皮肉っぽい様子は無いが、多分征治さんがそう言って聞かなかったのだろう。礼門も、チャンスとばかりに私の言葉にのってくれた。
「若と、素子さんがそこまでおっしゃるのなら……」
そして、三人でダイニングテーブルにつき、朝食が始まった。
「……なんか、征治は、姉さんの言うことは素直に聞くんだね」
礼門がぼそっと言った。
「それは若の気のせいです、被害妄想です」
征治さんがずずっと味噌汁をすすった。
「そぉかなぁあ〜」
礼門が魚の身をほぐしながら返す。
私は、こういう風に、数人で食卓を囲むという事があまり無かった。思ったより疎外感を感じないのは、礼門のせいだろうか。
私の方は、まだ、どことなく壁を作ってしまっているけれど、礼門は、その壁をやすやすと乗り越えて来てくれる気安さがあった。
「姉さん、今笑った?」
「ゴメン、なんか、二人のやりとりがおもしろくて」
私は素直に答えると、礼門は少しほっとしたように言った。