君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
 母は、元々、黄金川財閥の一子会社に務めるOLだったらしい。親会社のオーナーにして御曹司であった父に見初められ、嫁いだものの、母の両親が相次いで亡くなり、元々親族と疎遠だった母の縁者と呼べる人は父だけになってしまったらしい。

「これは、うちの古株の女中頭の話だけど、祖母は、母に対してものすごく冷淡だったらしい。祖母は、婿をとって父を産んだ、つまり、実質的な黄金川の当主は祖母だった。手塩にかけて育てた一人息子が、素性もはっきりしない家の娘、母さんの事だね、を、嫁にすると決めた時は、荒れに荒れたそうだよ。……でも、結局祖母が折れた。母さんが、姉さんを身ごもったからだ」

 なるほど、そういう事か……。私は何となく合点がいった。

 母が婚家を出て、夫と、婚家に残してきた弟の話を一切しなかった理由を。

 礼門は続けた。

「出産前に、エコーで姉さんが女だとわかっても、産むまでは確定では無いからと、祖母を押さえていた父だったけれど、実際産まれたのが女子だった時の、祖母は、本当にひどかったらしいね、母子共々追い出しかねない剣幕だったらしい。……でも、父は母を守り、また、母は早々に二人目を身ごもった、それが僕だ」

「祖母は、よく言えば伝統を大切にする古いタイプの女性、……まあ、率直に言わせてもらえればただのくそばばあだけど」

 礼門は、自分の祖母をいまいましそうにこき下ろした。

「ともかく、世継ぎかもしれない子供を身ごもっているうちは、母さんにも姉さんにも、危害を加えるような事は無かった」

「けれど、僕が、男だとわかり、無事出産されると、祖母は積極的に母を排除にかかったんだ」

「父と母のそもそもの出会いは、守護聖獣管理部門の設立がきっかけだった、白虎召喚の適性のあった母は、まず、守護獣、白虎の主になり、同様に麒麟の主だった父と恋におちて姉さんが産まれたわけ、だから、本来、祖母に、母をどうこうする権利は無いんだけど、あのババア、最後の手段に出やがった……っと、失礼、最後の手段をとろうとした」

「母さんを亡き者にした上で、姉さんを白虎に喰わせる気だったんだよ」

「そうする事で、白虎は改めて主を変えられる、次代の白虎も選んでいたようだから、本当に、津九音市の事なんかおかまいなしに、我が子の嫁が、母さんである事が耐えられなかったみたいだね」
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