君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
 『儀式』の前に、就職予定の職場と、大学の恩師の元へ行っておく事にした。『遺骨』と共にで無ければ、白虎に襲われる心配は無さそうだけれど、念の為、と、征治さんが付き合ってくれる事になった。

「……素子さん、いいんですか」

 運転する征治さんの隣、助手席に、私は座っていた。

「元々ね、母が亡くなって、すぐに仕事に入れるのか、って、心配はしてくれてたんです、先生も、職場の人も」

 礼門のおかげで、当面の家賃の心配が無くなった事も大きかったかもしれない。(結局、あのマンションは礼門の持ち物で、事が落ち着くまで私は居候させてもらう事になったのだった)

 その礼門も、一緒に来ると言っていたが、仕事があるので、部屋に残った。

「二人っきりでドライブとか!」

 と、礼門はしきりに言っていたけど、別にドライブというわけでは……。と、助手席から運転する征治さんを見た。

 征治さんは、一見した時と少しイメージが違うような気がする。初めて礼門と一緒にアパートに来た時は、あまり表情も変えずに、じっと黙っている寡黙な人なのかと思ったけれど、礼門とのやりとりは打ち解けていて、表情もやわらかい。

「征治さんは、礼門と仲いいですよね」

 そう言うと、征治さんは少し複雑そうな顔をして、

「仲が良い、とは、少し違うかもしれませんが、若が産まれた頃からのご縁ですし、……なんというか、弟のように思っています、あ、これは、若には内緒にしておいて下さいね」

 そう言って、少し恥ずかしそうに笑う征治さんは、やっぱり表情がやわらかい。

「礼門って、どんな子供だったんですか?」

「天使と悪魔が同居している……という感じでしょうか」

 先ほどのやわらかな表情から一転して、またしても微妙な表情を征治さんはした。

「若は、とても利発で、大人がよくやるごまかしを見ぬいてしまうようなところがありまして……」

 征治さんの話では、礼門は、祖母、多喜子が、母の悪い印象を強くしようとする言葉の裏を見抜き、正しい情報を集め、理解しようとしたのも礼門自身だという。

「何より、旦那様は奥様をずっと思っていらっしゃいましたから……」

 征治さんは、何かを思い返すように言った。

「父は、母と離婚したと聞いていますが、父自身は離婚に反対していたんでしょうか」
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