君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
 この先、私はどうしたらいいのか、ノートに書き出してみた。
 悩んだ時や、一人で収集がつかなくなったら、まず思ったことを書き出すといいと言っていたのは母だった。

 まず、最優先させなくてはいけないのは白虎の件だ。主のいない聖獣は魔獣と化すという。魔獣化を避けるには、私が主になるか、私が白虎に食われた後、新しい主が決まるか。

 これは、私にしかできない事だ。

 一番いい結果は、私が白虎の主になる事。

 そうすれば、白虎は元の守護聖獣に収まり、私は仕事も得ることができる。
 ……征治さんと、一緒の仕事。

 守護聖獣管理部門。

 次にいい事は、私が白虎に食われる事。
 少なくとも、白虎が魔獣化する事は無い。
 漠然と、死にたく無いし、食べられるのは嫌だな、と、思う。
 ……思うんだけど、もし、そうなったら、征治さんは私の事をずっと覚えてくれるのかな、とも思う。
 例えば、征治さんに既に恋人がいたとしても、そんな風に命をかけた私の事を、ずっと覚えていてくれたりするのかな、と。

 もしも、私の思いが届かないのなら、そんな風に幕が降りても、後悔しないかもしれない。

 その感情が、どこか歪んでいる事は、自分でもわかる。
 でも、そんな形でもいいから、私の事を思って欲しいと願ってしまう。

 だから、一番ダメなのは、白虎が魔獣化してしまう事。

 もしそうなったら、私は本当に役に立たないし、どんな被害が出るかもわからない。
 沢山の人に迷惑をかけた私を、征治さんは軽蔑するかもしれない。

 それは、嫌だと思う。
 したくない、と、思う。

 書き終えて、ふと、母の引き継ぎノートを取り出して、パラパラとめくる。
 昔の仕事の事、社会人としてのありよう、家事、家政についてが、事細かに書いてあった。

 その中に、『好きな人ができたら』という項目が目に止まって、ページを開いたけれど、書かれているのはその項目ひとつだけで、後は白紙だった。

 これじゃあ、『引き継ぎ』になってないよ、おかーさん。

 産まれたばかりの礼門を置いて、父の元を出た母。
 親の決めた相手のいた父と、結婚して、二人の子供を産んだにも関わらず、父の元を出たのは何故なんだろう。

 ……でも、娘とそんな話をする性格の人じゃなかったもんなあ。

 元気な頃の母の事を思い出す。
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