君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
 何をするにも真面目で、熱心で、私は母に劣等感を抱いていた。
 何をやったって、母にはかなわないんじゃないか。
 母以上にうまくいく事なんてないんじゃないか。

 だから、今回、母が白虎の一切を私に残さなかった事で、ああ、自分は母に信頼されてなかったんだなあ、とも思った。

 母にとって、私は対等な人間では無かった。守り、庇護するべき子供ではあったのかもしれないけれど、一人の成人として、相談してくれた事は無かった。

 親というのはそういうものなのかもしれないけれど、でも、私にとって母は、母でありながら友人でもあり、唯一無二の家族で、人間関係の全てだったのだ。その母に信じてもらえていなかったという喪失感と、入れ違いで、礼門と征治さんは私の心を満たしてくれた。

 ほんの数日で、……我ながら、単純というか、簡単だなあ。

 身支度を終えて、私は姿見で全身を確認した。

 動きやすい格好の方がいいかなと、作業着みたいになってしまっているけれど、相手は獣なのだから。

 覚悟を決めて、私は部屋を出た。
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