君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
 ……でも、私は、生きている母に、聞きたい事がたくさんあった。
 目の前にいるのは、母そのものの姿をしている。では、『コレ』が、母に替わって答えてはくれないのだろうか。
 
「……お母さんッ」

 違う、と、思いながら、私は自分を止める事ができなかった。

「お母さんは、どうして教えてくれなかったの? お父さんの事、礼門の事、私、邪魔だった? いらない子だった? お母さんが信じて、本当の事を話してくれないほど、私、ダメな娘だったの?」

 私は、先ほど、征治さんと別れる時に、こらえていた涙が頬をつたい落ちていくのを感じていた。

 母は、悲しそうに私を見つめるだけで、私の問に答えてはくれない。

「お願い、答えて、私が居なければ、お母さんはお父さんと別れなくて済んだの? 私のせいで、お母さんは不幸になったの?」

 堰を切ったように、私は叫び続けた。
 考えまいとしていた言葉が、溢れだして止まらない。

 母は、いつも私に辛いところを見せなかった。そして、一人で生きられるようにと言い続けた。いつか、お母さんがいなくても大丈夫なように。誰に頼らなくてもいいように。

 ……でも、私、お母さんに頼って欲しかったし、頼りたかったんだよ。

 母の白い手が、私の首にかかった。
 ぐっ、と、力がこもる。

 そうか、私を殺して、それからこれは私を食べるのか。

 生きながら食われるので無ければ、痛みは無いのかもしれない。

 そう思ったら、体から力が抜けていった。

 甘い夢に酔うように、私の意識が霞んでいく。

 目の前の、母の姿をしたこれが、答えてくれないなら、死んでから母に会って確かめる事ができるだろうか。

 目の前が、赤く、血の色に変わっていく。

 私が、死んだら、征治さんは、少しは悲しんでくれるのだろうか。時々は、思いだしてくれるだろうか。
 礼門、怒るかな。

 私の意識が、途切れる、その時だった。

「聖獣召喚! 東帝 青龍、我が身を覆い、力を示せ!」

 誰かが叫ぶ声がして、私の体が再び宙に浮かび上がった。
 うっすらとした意識で、見上げると、青い顔全体を覆うようなマスクを着けている人の姿があった。
 ……なんだろう、これ、遊園地とか、日曜の住宅展示場とかで見かける……。
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