君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
 アルバイトで行った住宅展示場のイベントで、やっていたヒーローショーの人が、こんなかっこうをしていた、ような気がする。

「素子さん! しっかりして下さい! あなた、食われるところだったんですよ?!」

 この声は……征治……さん?
 この、青い人が?
 気を失っちゃダメだ!征治さんに抱きかかえられながら、
 私はカッと目を開いて、征治さんを見た。

「白虎……は」

「素子さん、立てますか?」

 私がうなずくと、征治さんは私をおろしてくれた。
 同じホーム、くだり方面の端に、獣の姿に戻った白虎がいた。

 色形は、初めて見た時を大きく変わり無いように見えるけれど、だいぶ大きくなっている気がする。

 よろけそうになる私を征治さんが支えてくれた。

「あれは……もしかして、魔獣化、した?」

「まだです、まだ、間に合います、素子さん、もう一度、行けますか?」

 征治さんに言われながら、私はすくんでいた足でもう一度ふんばった。

「……行けます」

 そうだった、私は、白虎に勝つ。勝って、征治さんに言わないと。
 もう、逃げない。
 お母さんが私をどう思っていたか、もう確かめる事はできない。
 だったらせめて、今、私の事を待ってくれている、礼門の為に、
 征治さんに思いを伝える為に、私は立ち向かわなくてはいけないんだ。

 私は、手首につけたウェアラブルデバイスに触れた。

『これは、今はまだブランク状態、何も入っていない、これに、白虎を封印する、特別な修行は必要無い、勝ちたいという強い意志が、白虎を捕らえる』

 そう言って、礼門が渡してくれたものだ。

 私は、白虎に向かって一歩踏み出した。

 背後に、征治さんがいる、そう思うだけで、自分が強くなれるような気がした。

 白虎は、私に襲いかかるわけでなく、ただ真っ直ぐに私に向き合った。

 お母さんが、召喚したという、聖なる獣。

 本来なら、街を、津九音市を守るための存在だったはず。

 今、ここで、魔獣化してしまう事は、白虎だって、多分本意では無いはずなんだ。

「私ね、ずっと、お母さんが笑ってくれるから、いい子だって言ってくれるから、がんばってきたような気がする、でも、それは、違うんだね、お母さんは、私が『がんばったから』褒めてくれていたわけじゃなかったんだ」
< 50 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop