君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
一歩、また一歩、と、白虎へ近づいていく。
「私が、楽しそうだから、うれしそうだから、喜んでくれていたんだ、多分」
もしかして、そうじゃないかもしれないけれど。
でも、言葉に出すことで、そう思えるような気がした。
「私も、お前も、お母さんが居なくなって、寂しいよね、だから一緒にいよう。私じゃ、お母さんの替りにはなれないかもしれないけど」
もう、あと一歩で、白虎に触れられそうなほどに近づいて、私は言った。
「……おいで」
白虎が、前足をあげ、立ち上がる。一瞬、怖い、と、思ったけれど、逃げてはダメだ。
私は、奥歯を噛みしめて、両足を踏ん張り、両手で白虎を抱きとめようとした。
かなりの重量にのしかかられる、と、身構えたけれど、重さは感じなかった。
ふわり、と、風が通り過ぎるような感覚があったかと思ったら、私は旋風のような風の渦の中にいた。
「ありがとう、……ごめんね」
確かに、母の声が聞こえたような気がして、旋風が消えると、灰色だったウェアラブルデバイスが白く輝いているのが見えた。
「征治さん!」
後ろで見守っていてくれた征治さんに、腕のデバイスを見せる。
「お見事です、素子さん」
そう言って、全身青いコスチュームと仮面を身につけた征治さんが、拍手をするように両手を叩いていた。
ちょうどそのタイミングで列車が停車した。列車から降りてきた人たちが、日常の光景から完全に浮いてしまっている征治さんを遠巻きに見守りながら、足早に去っていくのが見えた。
ベビーカーにのせられている男の子が、
「オオカミブルー! オオカミブルー!」
と言ってはしゃぎ、征治さんが手を振ってみせると、ますますエキサイトしているのを、お母さんとおぼしき女性が、恐縮して立ち去って行くのが見えた。
「私が、楽しそうだから、うれしそうだから、喜んでくれていたんだ、多分」
もしかして、そうじゃないかもしれないけれど。
でも、言葉に出すことで、そう思えるような気がした。
「私も、お前も、お母さんが居なくなって、寂しいよね、だから一緒にいよう。私じゃ、お母さんの替りにはなれないかもしれないけど」
もう、あと一歩で、白虎に触れられそうなほどに近づいて、私は言った。
「……おいで」
白虎が、前足をあげ、立ち上がる。一瞬、怖い、と、思ったけれど、逃げてはダメだ。
私は、奥歯を噛みしめて、両足を踏ん張り、両手で白虎を抱きとめようとした。
かなりの重量にのしかかられる、と、身構えたけれど、重さは感じなかった。
ふわり、と、風が通り過ぎるような感覚があったかと思ったら、私は旋風のような風の渦の中にいた。
「ありがとう、……ごめんね」
確かに、母の声が聞こえたような気がして、旋風が消えると、灰色だったウェアラブルデバイスが白く輝いているのが見えた。
「征治さん!」
後ろで見守っていてくれた征治さんに、腕のデバイスを見せる。
「お見事です、素子さん」
そう言って、全身青いコスチュームと仮面を身につけた征治さんが、拍手をするように両手を叩いていた。
ちょうどそのタイミングで列車が停車した。列車から降りてきた人たちが、日常の光景から完全に浮いてしまっている征治さんを遠巻きに見守りながら、足早に去っていくのが見えた。
ベビーカーにのせられている男の子が、
「オオカミブルー! オオカミブルー!」
と言ってはしゃぎ、征治さんが手を振ってみせると、ますますエキサイトしているのを、お母さんとおぼしき女性が、恐縮して立ち去って行くのが見えた。