君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
「ねーさん、ねーさんってば」

 ダイニングテーブルにつっぷした私を礼門がゆする。

 礼門は脳天気に言っているが、それでも、『これ』は、『この行為』そのものは意味があるのだと、信じたい。

「素子さん、喜んで『変身』したがるのは、若と南雲という……赤の朱雀だけです、私は、違います」

「えー!でも、今日したよね? 征治も、ヘンシン」

 征治さんと礼門のところに戻った時には、既に『青い人』ではなかったはずなのに、何故だか把握しているらしい。

「あれは!……非常時、でしたから」

 だんだん声が小さくなっていき、征治さんは恥ずかしそうだった。

「す、すみません、私のせいですよね!?」

「いえ、素子さんのせいでは、あれは、私が……私も、必死で……」

 顔を赤らめながら、はにかむ姿が大柄な姿とギャップがあって、なんだかかわいいと思ってしまった。

 ……何だろう、これは、もう、恋をした瞳で見ると、その人のしぐさも何もかもが好ましく見えてしまうのかもしれない。

「わかった、ただ、これは教えて、伊達や酔狂であんなギミックが必要なはずないよね? デザインや形状の趣味とセンスについては、もういいんだけど、ああした形をとるということは、守護聖獣管理部門というのは、何かと『戦う』必要があるって事なんでしょう?」

 一息に私が言うと、礼門が真面目くさった顔になって言った。

「津九音山は、力が強すぎるんだよ」

 そう前置きして、礼門は話を続けた。

「古来より、霊山とされてきた津九音山、津九音市は、その霊力をバックボーンにした都市でもある。けれど、強い力というのは、反動もある、制御する為に、形作られたのが守護聖獣」

 ……一気に胡散臭くなってきた、と、一瞬私は思ったけれど、すでに私は一度『白虎』に殺されかけている。あきあらかに日常と異なる空間としての万博パーク駅構内も体感している。

 有るか、無いかで言うならば、何らかの超常現象的な事象は発生し得る、という事なのだ。

「けれど、その守護聖獣を持ってしても、制御しきれないモノが、魔獣となってしまった」

 私も、自分で『見て』『感じて』いなければ、都市伝説の類と思って取り合わなかっただろうけど。

「その、魔獣は何をするの?」

「……人を、殺します」

 征治さんが説明を続けた。
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