君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
 年齢の割には長身で、背筋をぴりっと伸ばした凛とした和服の女性。
 眼鏡のフレームから、いかにもキツそうな印象になるその女性を見て、征治さんが行った。

「……大奥様」

 征治さんが大奥様と呼び、礼門がうろたえる相手、という事はつまり。

 この人が、私の祖母。

 祖母、黄金川多喜子が、私を、正確には、私が連れていた白虎を見て顔色を変えた。

「ヒッ!!」

 生き別れの孫である私には一瞥もくれず、祖母は、白虎の姿に多いにうろたえている。

「それを! その、けがらわしい生き物をどこかへやって!」

 祖母は、逃げるようにして、後退りをした。

 祖母の様子に違和感を感じた礼門が言った。

「何故? 黄金川家現総帥である貴女が、何故これほどまでに白虎を厭うのですか?」

 白虎も、私の腕の中で、祖母を警戒しているようだった。

 ぐるると喉を鳴らし、そして、白虎が祖母に向かって跳びかかった。

「イヤぁァァァ!!」

 悲鳴をあげた祖母に白虎が飛びかかる。

 私があわてて白虎を制しようとしても既に遅く、子猫のような小さな体から繰り出された爪が、祖母を引き裂いた。

 鮮血が飛び散り、私は息を飲んだ。
 ……その時だった。

 鮮血が、血煙をあげて、祖母の顔を溶かしていく。

 祖母の体は、青緑色の汚泥のように溶け、人の姿をしていたそれが、みるみる形を変えていく。

 祖母の姿は、人から、巨大な鼠に姿を変えていた。

「お祖母様、その……姿は」

 礼門が尋ねても、『それ』は既に人の姿をしては居なかった。

 かつて祖母の形をしていた巨大鼠は、窓を割り、逃げていく。

「征治!」

 礼門が言うよりも早く、征治さんは既に青龍を召喚し、姿を変えていた。

「追います!」

 高層マンションの最上階から、『青い人』に姿を変えた征治さんが飛び降りた。

「姉さん、いける?」

 そう言う、礼門は既にウェアラブルデバイスを頭上に掲げている。

「黄帝! 麒麟! 我が命に応えよ!」

 黄色い光が礼門の全身を覆い、礼門の姿は、征治さんとは色違いの黄色いスーツに変わっている。

「白虎、おいで!」

 私が、白虎を招き寄せると、白虎は、子猫から一気に成獣の大きさへかわり、白い光になって私の全身を包み込んだ。
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