君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
 体が引きつれるような痛みが全身を貫いた後、私自身も姿を変えていた。

 痛みに、私がもつれたようにダイニングテーブルへよろけたようによりかかると、姿を変えた礼門が問いかけた。

「姉さん、大丈夫?」

「うん、大丈夫」

 少し無理をしているのが、礼門にはわかったかもしれないけれど、今は倒れている場合じゃないんだ。

「じゃ、行くよ!」

 礼門が私の手を掴み、巨大鼠が飛び降りた時に粉々にした窓から、礼門と私は飛び降りた。

「うわッ……!」

 突然高いところから飛び降りる心の準備は無かった、けれど、急降下しながら、私の心は不思議と落ち着いていった。

 何故か、恐怖が薄れていく。

 私は地上にたたきつけられる事なく、何か追い上げる風圧によって加速度が相殺されて、私と礼門は地上のアスファルトに難なく着地した。

 下では、巨大鼠に征治さんが対峙していた。

「……気が付かなかったよ、まさか、黄金川家現当主が魔獣にとってかわられていたなんて」

 礼門が、色々納得したように言った。

「いつから……かは、今は考えている場合じゃないか、ともかく、今はこいつをどうにかしないと」

 大鼠は、特に私に対して強い敵意をもっているように見えた。

「やっぱり、鼠は猫が苦手……、なのかな?」

 後は、一番弱そうなのが私、だからか……。

 目を背けたら、飛びかかってこられる、そんな殺気を向けられながら、私は不思議と安心いていた。
 白虎のおかげ……?

 拮抗を崩し、先に跳びかかったのは征治さんだった。いつの間にか手にした剣で大鼠に斬りかかろうとした。けれど、切っ先がわずかにそれ、大鼠はその大きな体躯に似合わず俊敏に、征治さんの間合いに入る。

「ぐああぁぁぁッ!」

 大鼠の牙が、征治さんの肩をとらえ、噛みつかれた征治さんがうめき声をあげる。

 私は、攻撃される征治さんを見て、頭が真っ白になり、無意識に体が動いた。

 地を蹴り、大きく跳躍し、体がしなる。
 空を切り裂くような弧を描いて、
 私の拳が大鼠の脳天をえぐった。
 拳の感触。手応えを感じながら、私は再び拳を降り下ろした。

「姉さんっ!」

 後ろの方で、礼門の声が聞こえたような気がした、と、思ったけれど、血によったのか、私は大鼠を殴り続けた。
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