君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
どうする? どうなる? 今後の暮らし
 黄金川本家は、津九音山へ至る途中にあった。
 財閥の本家と聞いていたけれど、そこは、思っていたよりもこじんまりとした古風な日本家屋だった。

 こじんまりしている、といっても、それは想像していた大財閥の邸宅のイメージに比べて、であって、世間一般の民家とくらべれば規模も大きい。

 私達を玄関先で迎えてくれた女中頭さんは私の事を覚えていてくれたようで、私を見ると、感慨深そうに『おかえりなさいませ』と言ってくれた。

 足早に家の奥へ進んでいく礼門を追いかけながら、私は何となくこの家を覚えていると感じていた。縁側から見える庭の光景、歩くとわずかに軋む音をたてる床の感触。

 礼門がまっすぐ向かったのは、祖母の書斎だという場所だった。

 ほどなく、車を止めに行っていた征治さんが壮年の男性をともなって現れた。

「若……」

 征治さんよりも少しだけ差が低いその男性は、征治さんのお父さんで先代青龍。今は黄金川家の執事をしているという男性だった。

 祖母の書斎に、礼門、私、征治さん、征治さんのおとうさんが集まった。

「……まさか、大奥様の身が、魔獣にのっとられていたとは……」

「いつからだったと思う?」

 礼門が尋ねた。

「……大奥様らしくない、そういった違和感を感じたのは、志門様がご成婚された時からです」

 征治さんのお父さんの話はこうだった。
 元々、父には婚約者がいたという。
 けれど、父はそれを破談にし、結局母と結婚した。

 父と母の仲を、最初祖母は大きく反対はしていなかったそうだ。
 しかし、ある日、破談された父の元婚約者が会いに来て以降、人が変わったように、祖母は母に辛くあたるようになったそうだ。

「大奥様は、気位の高い方ではありましたし、傲慢なところもお持ちでございましたが……」

 大切な一人息子を奪われて、情緒不安定になっている、と、使用人はじめ、息子である父もそのように納得してしまっていたようだ。

「祖母に憑いていたのは大ネズミだった、虎である白虎を守護獣として持つ母さんを追いだそうとしていたのだとしたら、色々合点がいくんだよ」

 そう言う礼門は複雑そうだった。私と礼門、二人共接していた祖母は、既に魔獣にとってかわられていたという事なのだから。
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