君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
同居、はじめます
 津九音市内に入ってから、礼門が、お茶でも、という。聞けば、引越し業者に話もつけてあるという。
 私としても、もう少し話を聞きたかったし、引越し荷物を運び入れたばかりの新居では、お茶を飲む場所もないだろうと考えて、同意することにした。

 プリウスが地下駐車場に入り、直通エレベーターで昇った先にあったのは……。

「ん? ここ、どこですか? ホテルのラウンジ? とか? ティールーム、とか?」

 見慣れない場所でうろたえる私をスマートに誘導し、礼門が言った。

「こっちだよ」

 母の遺骨をかかえた礼門が先へ行き、その後ろを私が、私の後ろを征治さんが続く並び方で進むと、礼門がドアを開けたそこは。

「……えーっと……ここは……」

 恐ろしく眺めのよいリビングからは、夕暮れの空がよく見える。そう、ここは個人宅のリビングのようだった。お店、では、無い。と、思う。

「僕のマンションだよ♪」

 にっこり、と、礼門が微笑んだ。
 ああ、そうだ、彼は財閥の御曹司なのだった。

 私の考えている『ちょっとお茶でも』は、国道沿いのファミリーレストランのドリンクバーか、チェーンのコーヒーショップがせいぜいで、それでも、自分と生活園の異なる人だから、ホテルのティーラウンジあたりかと思っていたけれど、さらにそれを上回る場所に連れてこられてしまった事に、私は動揺を隠す事ができなかった。

「僕は、お茶でも、と言ったのであって、カフェやティールームへ誘ったんじゃないよ?」

 確かにそれは礼門の言うとおりなのだけれども……。と、すすめられたお高そうなソファに腰掛けて、待っていると、トレイにコーヒーカップとケーキをのせた征治さんがやって来た。

 お高そうなパティスリーの小洒落たケーキを想像したが、のせられていたのは『普通の』見た目のケーキで、私は少しほっとした。

 勧められて口をつけると、甘さもほどよくて、素朴な見た目を上回る美味しさだった。

「美味しい!」

 素直に口に出すと、何故か座った礼門の後ろに立っていた征治さんが照れたように微笑んでいる。

「それはよかった、征治の手作りなんだ、それ」

 うわぁ、と、私は思ったが、声に出すような無作法はしなかった。青竹征治という人は、いったいどういう立ち位置の人なのだろう。今は座らず、礼門の後ろに立っている。
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