【長編】戦(イクサ)林羅山篇
相国寺と円光寺
問答当日。
再び徳川家康に呼ばれた林羅山
は二条城に出向いた。
謁見の間にはすでに舟橋秀賢、
相国寺の承兌長老、円光寺の元佶
長老が着座していた。
相国寺には藤原惺窩が若かりし
頃、一時身を寄せ、やはり若かっ
た承兌と一緒に勉学に励んでいた
ことがある。
今の承兌長老は衰退していた相
国寺の復興に躍起になっていたの
で惺窩の弟子である羅山の仕官は
その妨げとなるのではないかと不
安を感じていた。
円光寺は家康が創立し、足利学
校の第九代学頭だった元佶を招い
て僧以外の入学も認める学校とし
た。木製の活字を利用した書物を
多数刊行していた。
元佶長老も自分の広めている学
問とは異なる惺窩門下の権勢が強
くなるのを恐れていた。
しばらくして入って来た羅山は
この二人の静かだが威圧する視線
にも平然と構え着座し、三人に一
礼した。
再び徳川家康に呼ばれた林羅山
は二条城に出向いた。
謁見の間にはすでに舟橋秀賢、
相国寺の承兌長老、円光寺の元佶
長老が着座していた。
相国寺には藤原惺窩が若かりし
頃、一時身を寄せ、やはり若かっ
た承兌と一緒に勉学に励んでいた
ことがある。
今の承兌長老は衰退していた相
国寺の復興に躍起になっていたの
で惺窩の弟子である羅山の仕官は
その妨げとなるのではないかと不
安を感じていた。
円光寺は家康が創立し、足利学
校の第九代学頭だった元佶を招い
て僧以外の入学も認める学校とし
た。木製の活字を利用した書物を
多数刊行していた。
元佶長老も自分の広めている学
問とは異なる惺窩門下の権勢が強
くなるのを恐れていた。
しばらくして入って来た羅山は
この二人の静かだが威圧する視線
にも平然と構え着座し、三人に一
礼した。