【長編】戦(イクサ)林羅山篇
石川丈山
朝鮮の使節が伏見城で秀忠に謁
見する席に道春は加えられず、自
宅に居たところ石川丈山が訪ねて
来た。
丈山は道春とは同年齢で母は本
多正信の姉。自身も武芸に優れて
いたため十六歳の時から家康に目
をかけられ近侍として仕えた。こ
の頃は武士としての出世を強く望
んでいた。それが災いして二度目
の大坂の合戦では先陣争いを禁じ
た軍律を破ったため、戦功を挙げ
たにもかかわらず処罰された。そ
れをきっかけに武士をやめ妙心寺
で禅僧の道を歩んでいた。道春が
駿府に赴いた頃から知り合い、気
心を通わせていた。
「道春殿、お久しぶりです」
「これはこれは、丈山殿、少し痩
せたように見えるが、禅の道は険
しそうだな。さあ、上がってく
れ」
見する席に道春は加えられず、自
宅に居たところ石川丈山が訪ねて
来た。
丈山は道春とは同年齢で母は本
多正信の姉。自身も武芸に優れて
いたため十六歳の時から家康に目
をかけられ近侍として仕えた。こ
の頃は武士としての出世を強く望
んでいた。それが災いして二度目
の大坂の合戦では先陣争いを禁じ
た軍律を破ったため、戦功を挙げ
たにもかかわらず処罰された。そ
れをきっかけに武士をやめ妙心寺
で禅僧の道を歩んでいた。道春が
駿府に赴いた頃から知り合い、気
心を通わせていた。
「道春殿、お久しぶりです」
「これはこれは、丈山殿、少し痩
せたように見えるが、禅の道は険
しそうだな。さあ、上がってく
れ」