【長編】戦(イクサ)林羅山篇
藤原惺窩、死去
京の自宅に戻っていた道春が平
穏な日々を送っていた時、藤原惺
窩が死去したという知らせが届い
た。
惺窩が中風を病み、寝込んでい
ることは手紙が届いて知ってはい
たが、死ぬということは道春の頭
の片隅にもなかった。
「先生が死んだ。まだ五十九では
ないか。これからご恩返しをしな
ければならないという時に……」
道春は悲しみに暮れたが、これ
は悲劇の始まりでしかなかった。
藤原惺窩は亡くなったが道春を
はじめ松永尺五、那波活所、堀杏
庵などの有能な門人が巣立ち、一
大学派として幕府にも影響力を増
していた。そのため惺窩の弟子た
ちに精神的支柱を失った悲しみは
あったが、将来に対する不安はな
く、それぞれが行き場所を見つ
け、惺窩の遺志を継ぐことを誓っ
た。そして道春のもとにも惺窩の
弟子たちの一部が集まり、道春は
新たな門人として受け入れた。
穏な日々を送っていた時、藤原惺
窩が死去したという知らせが届い
た。
惺窩が中風を病み、寝込んでい
ることは手紙が届いて知ってはい
たが、死ぬということは道春の頭
の片隅にもなかった。
「先生が死んだ。まだ五十九では
ないか。これからご恩返しをしな
ければならないという時に……」
道春は悲しみに暮れたが、これ
は悲劇の始まりでしかなかった。
藤原惺窩は亡くなったが道春を
はじめ松永尺五、那波活所、堀杏
庵などの有能な門人が巣立ち、一
大学派として幕府にも影響力を増
していた。そのため惺窩の弟子た
ちに精神的支柱を失った悲しみは
あったが、将来に対する不安はな
く、それぞれが行き場所を見つ
け、惺窩の遺志を継ぐことを誓っ
た。そして道春のもとにも惺窩の
弟子たちの一部が集まり、道春は
新たな門人として受け入れた。