【長編】戦(イクサ)林羅山篇
陽のまつりごと
道春が家光のもとに出向くと、
老中となった稲葉正成の長子、正
勝が、その側にいた。
正勝は家光に幼い頃から仕えて
いたため、兄のように頼られ、正
成にも劣らない聡明さで、激務を
こなしていた。
道春は正勝に軽く会釈して、家
光に平伏した。
「こたび上様におかれましては、
征夷大将軍への補任、おめでとう
ございます」
「ふむ。これからも先生にはお知
恵を拝借したく、よろしくお願い
いたします」
「ははっ。上様、どうか道春とお
呼びください」
「まだ慣れません。そのうちに。
ところで私は将軍になったとはい
え、当面は父上がなにごともなさ
るであろう。天海の申すには父上
のまつりごとは陰。だから私には
陽のまつりごとをするようにと。
そこで権現様をお祀りしている日
光の東照社を新しくしようと思
う」
老中となった稲葉正成の長子、正
勝が、その側にいた。
正勝は家光に幼い頃から仕えて
いたため、兄のように頼られ、正
成にも劣らない聡明さで、激務を
こなしていた。
道春は正勝に軽く会釈して、家
光に平伏した。
「こたび上様におかれましては、
征夷大将軍への補任、おめでとう
ございます」
「ふむ。これからも先生にはお知
恵を拝借したく、よろしくお願い
いたします」
「ははっ。上様、どうか道春とお
呼びください」
「まだ慣れません。そのうちに。
ところで私は将軍になったとはい
え、当面は父上がなにごともなさ
るであろう。天海の申すには父上
のまつりごとは陰。だから私には
陽のまつりごとをするようにと。
そこで権現様をお祀りしている日
光の東照社を新しくしようと思
う」