【長編】戦(イクサ)林羅山篇
天上人
秀忠は十月になっても和子が子
を産む様子がないので江戸に戻る
ことにした。この時、道春らにも
内密にお江与の死が知らされた。
道春は江戸に戻る秀忠を見送
り、一部の残った家臣らと雑務を
していた。そうしている十一月十
三日に和子が待望の男子を産ん
だ。このことはすぐに秀忠に知ら
され、お江与の死で落ち込んでい
た秀忠を奮い立たせた。
「ようやった和子。これでわしは
帝の祖父。父上さえも成し遂げら
れなかった天上人になったぞ」
道春が江戸に戻り、年が明けた
寛永四年(一六二七年)にはお江
与の葬儀をそつなく執り行って秀
忠から信頼されるようになった家
光が本格的に幕政を取り仕切る下
地ができ、道春にも重要な政務に
かかわる機会が増えてきた。
を産む様子がないので江戸に戻る
ことにした。この時、道春らにも
内密にお江与の死が知らされた。
道春は江戸に戻る秀忠を見送
り、一部の残った家臣らと雑務を
していた。そうしている十一月十
三日に和子が待望の男子を産ん
だ。このことはすぐに秀忠に知ら
され、お江与の死で落ち込んでい
た秀忠を奮い立たせた。
「ようやった和子。これでわしは
帝の祖父。父上さえも成し遂げら
れなかった天上人になったぞ」
道春が江戸に戻り、年が明けた
寛永四年(一六二七年)にはお江
与の葬儀をそつなく執り行って秀
忠から信頼されるようになった家
光が本格的に幕政を取り仕切る下
地ができ、道春にも重要な政務に
かかわる機会が増えてきた。