【長編】戦(イクサ)林羅山篇
入れ知恵
 家康の後を継ぎ征夷大将軍と
なって意気揚々としている秀忠に
家康は苦笑いして聞いた。
「秀頼様は今、何歳じゃったかの
う」
「確か、十三歳にございます」
「十三か。まだここまで知恵は働
くまい。秀忠は誰の入れ知恵じゃ
と思う」
「家老の片桐且元あたりかと」
「ほほう。なかなか鋭いのう。将
軍になってちとは貫禄がでてきた
か」
「ははっ。それにしても豊臣家は
秀頼の義理の父であるわしを侮り
おって。父上、これは誅伐に値し
ます」
「まあまあ、そうことを荒立てず
ともよい」
 家康は六男の松平忠輝を大坂城
に派遣して秀頼の顔を立てた。し
かし波乱の芽は静かに成長して
いった。
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