【長編】戦(イクサ)林羅山篇
秀忠の怒り
天皇の譲位に何も知らされてい
ない公家たちから動揺が起こっ
た。側近である土御門泰重にも知
らされていないことに京都所司
代、板倉重宗はなす術もなく江戸
に知らせて判断を仰いだ。
一報を聞いた秀忠は激怒し「帝
を隠岐島に流す」と言い出した。
家光のもとに稲葉正勝が駆けつ
け秀忠の様子を伝えた。それを聞
いた家光は慌てるでもなく正勝と
共に秀忠のもとに向かった。まだ
怒りが治まらない秀忠は座敷をひ
とり右往左往していた。
「父上、落ち着いてください。今
となってはどうすることもできま
せん。それよりこの後のことを考
えねば」
「これが落ち着いておられるか。
わしにことごとく楯突きおって、
もう許さん。和子とも離縁じゃ」
「何を申されます。父上は朝廷と
戦をなさるおつもりか。権現様が
お聞きになったらなんと申される
か」
ない公家たちから動揺が起こっ
た。側近である土御門泰重にも知
らされていないことに京都所司
代、板倉重宗はなす術もなく江戸
に知らせて判断を仰いだ。
一報を聞いた秀忠は激怒し「帝
を隠岐島に流す」と言い出した。
家光のもとに稲葉正勝が駆けつ
け秀忠の様子を伝えた。それを聞
いた家光は慌てるでもなく正勝と
共に秀忠のもとに向かった。まだ
怒りが治まらない秀忠は座敷をひ
とり右往左往していた。
「父上、落ち着いてください。今
となってはどうすることもできま
せん。それよりこの後のことを考
えねば」
「これが落ち着いておられるか。
わしにことごとく楯突きおって、
もう許さん。和子とも離縁じゃ」
「何を申されます。父上は朝廷と
戦をなさるおつもりか。権現様が
お聞きになったらなんと申される
か」