【長編】戦(イクサ)林羅山篇
女の子、誕生
 寛永七年(一六三〇年)
 正月に道春と東舟は江戸城に呼
ばれ、居並ぶ諸大名や天海、崇伝
に次いで、初めて秀忠と家光に参
賀を許された。そして政務では宗
教上の紛争処理を協議する奉行を
務めるなど、地位を確立していっ
た。
 道春は忙しい政務の合間にも家
光に供をして川越、鴻巣に行き、
鷹狩りをして兵法の実地訓練を教
授した。
 東舟は秀忠が天皇の譲位で気力
を失い、病にふせることが多くな
り、その看病にあたった。
 五月に京から亀が病になったと
道春に知らせがあり、急いで戻っ
てみると女の子が誕生していた。
亀はまだ横になり、辛そうにして
いた。
 道春は亀を気遣い、しばらく留
まって、生まれた女の子を振娘と
名付けた。また十三歳になった三
男、吉松が元服し春勝と名を改め
たのを祝った。
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