【長編】戦(イクサ)林羅山篇
秀忠と忠長
家光の弟、忠長は駿河五十五万
石を領し、駿府城主となってい
た。
「父上、ご心配には及びません。
兄弟仲良くやってまいります」
「いや、それはならん。わしとお
前のように父と子ならば一方が出
れば一方が退くこともでき、家臣
らも従いやすかろう。しかし忠長
にはそれは無理じゃ」
「忠長には、私がよう言い聞かせ
て従わせます」
「わしもそう願っておる。しか
し、もしも忠長がお前に従わぬ時
は遠慮なく処罰せい。生温い処罰
で手をこまねいてはならんぞ。ひ
とおもいにやるのじゃ」
「はい、分かりました」
「お前を将軍として良かった。こ
れも権現様のお導きだったな。よ
し、忠長を呼べ」
しばらくして秀忠の容態悪化を
知った忠長が慌てて江戸城に駆け
つけた。
「父上、お加減はどうですか」
「おお忠長、よう来てくれた。今
は少し良うなった。心配かけてす
まなかったな」
「なにを申されます。父上は天下
にとって大事なお方、長生きして
頂かなければなりませぬ」
「わしはもう家光に後の事は託し
た。お前には兄を助け、天下安泰
が末永く続くよう勤めてもらいた
い」
「はい、分かりました。兄上の足
手まといにならぬよう精進いたし
ます。ですから父上も見守ってい
てください」
「それを聞いて安心した。頼んだ
ぞ」
石を領し、駿府城主となってい
た。
「父上、ご心配には及びません。
兄弟仲良くやってまいります」
「いや、それはならん。わしとお
前のように父と子ならば一方が出
れば一方が退くこともでき、家臣
らも従いやすかろう。しかし忠長
にはそれは無理じゃ」
「忠長には、私がよう言い聞かせ
て従わせます」
「わしもそう願っておる。しか
し、もしも忠長がお前に従わぬ時
は遠慮なく処罰せい。生温い処罰
で手をこまねいてはならんぞ。ひ
とおもいにやるのじゃ」
「はい、分かりました」
「お前を将軍として良かった。こ
れも権現様のお導きだったな。よ
し、忠長を呼べ」
しばらくして秀忠の容態悪化を
知った忠長が慌てて江戸城に駆け
つけた。
「父上、お加減はどうですか」
「おお忠長、よう来てくれた。今
は少し良うなった。心配かけてす
まなかったな」
「なにを申されます。父上は天下
にとって大事なお方、長生きして
頂かなければなりませぬ」
「わしはもう家光に後の事は託し
た。お前には兄を助け、天下安泰
が末永く続くよう勤めてもらいた
い」
「はい、分かりました。兄上の足
手まといにならぬよう精進いたし
ます。ですから父上も見守ってい
てください」
「それを聞いて安心した。頼んだ
ぞ」