【長編】戦(イクサ)林羅山篇
朝鮮通信使の贈物
寛永二十年(一六四三年)
大飢饉の真っ只中、朝鮮通信使
の一行、四百七十七人が家光の嫡
男、竹千代の誕生を祝賀するため
にやって来た。こうした理由で
やって来るのには明の崩壊で金か
ら国号を改めた清に朝鮮も服属し
て政情不安になり、日本は大飢饉
で疲弊しているといっても金銀の
産出量などが膨大で安定した政権
を維持しているため、交流を深め
後ろ盾にしようとする態度が明確
だった。
三使の正使・尹順之、副使・趙
絅、従事官・申濡は前回と同様、
家光に謁見して、竹千代誕生の祝
辞を書いた国王、李宗の国書を渡
し、その返書を道春が起草、元良
が清書した。その後、日光東照社
に参拝した。
今までと違っていたのは三使が
道春に贈物を持って来ていたこと
だ。すでに朝鮮では道春が手強い
人物だということが知れ渡り、家
光への影響力があると考えたから
だ。
今回も道春がどんな質問をして
くるか三使は恐れていたが、道春
は諸家系図の作成が大詰めの時で
もあり、それほどたいした質問は
しなかった。それを三使は贈物の
おかげと勘違いして春斎、守勝と
も和やかに交流して帰っていっ
た。
八月になって春斎に長男が誕生
した。道春にとって初めての孫
は、我が子とは違う喜びがあっ
た。
大飢饉の真っ只中、朝鮮通信使
の一行、四百七十七人が家光の嫡
男、竹千代の誕生を祝賀するため
にやって来た。こうした理由で
やって来るのには明の崩壊で金か
ら国号を改めた清に朝鮮も服属し
て政情不安になり、日本は大飢饉
で疲弊しているといっても金銀の
産出量などが膨大で安定した政権
を維持しているため、交流を深め
後ろ盾にしようとする態度が明確
だった。
三使の正使・尹順之、副使・趙
絅、従事官・申濡は前回と同様、
家光に謁見して、竹千代誕生の祝
辞を書いた国王、李宗の国書を渡
し、その返書を道春が起草、元良
が清書した。その後、日光東照社
に参拝した。
今までと違っていたのは三使が
道春に贈物を持って来ていたこと
だ。すでに朝鮮では道春が手強い
人物だということが知れ渡り、家
光への影響力があると考えたから
だ。
今回も道春がどんな質問をして
くるか三使は恐れていたが、道春
は諸家系図の作成が大詰めの時で
もあり、それほどたいした質問は
しなかった。それを三使は贈物の
おかげと勘違いして春斎、守勝と
も和やかに交流して帰っていっ
た。
八月になって春斎に長男が誕生
した。道春にとって初めての孫
は、我が子とは違う喜びがあっ
た。