【長編】戦(イクサ)林羅山篇
駿府城
駿河、駿府城に入った道春は三
百俵の待遇で召抱えられ、後に駿
河文庫と呼ばれるようになる家康
の所蔵する膨大な書物の管理を任
され、書庫の鍵を渡された。
書庫に入ると薄暗く、ひんやり
としてまるで牢獄のようだった。
小早川秀秋の頃からしてみれば
五十一万石の大名から三百俵の僧
侶扱いと奈落の底に落ちたような
違いだったが、道春にみじめさは
なかった。
今までは豊臣家や毛利一族とい
う後ろ盾があり、その力を利用し
ていたに過ぎない。これからが自
分の力を発揮する時と気力が増し
てきた。
しばらくは家康のお呼びもかか
らず、暇な時は遠出をして駿河の
各地を見て回った。
ちょうどこの頃、土木工事の名
人、角倉了以が富士川に船路を整
備していた。
(これが大御所様の統治のやり方
か。すごいものだ)
別の村に立ち寄った時、道春の
足が止まった。
百俵の待遇で召抱えられ、後に駿
河文庫と呼ばれるようになる家康
の所蔵する膨大な書物の管理を任
され、書庫の鍵を渡された。
書庫に入ると薄暗く、ひんやり
としてまるで牢獄のようだった。
小早川秀秋の頃からしてみれば
五十一万石の大名から三百俵の僧
侶扱いと奈落の底に落ちたような
違いだったが、道春にみじめさは
なかった。
今までは豊臣家や毛利一族とい
う後ろ盾があり、その力を利用し
ていたに過ぎない。これからが自
分の力を発揮する時と気力が増し
てきた。
しばらくは家康のお呼びもかか
らず、暇な時は遠出をして駿河の
各地を見て回った。
ちょうどこの頃、土木工事の名
人、角倉了以が富士川に船路を整
備していた。
(これが大御所様の統治のやり方
か。すごいものだ)
別の村に立ち寄った時、道春の
足が止まった。