【長編】戦(イクサ)林羅山篇
秀忠対面
秀忠は儒者の頭巾を被った道春
の顔を怪訝そうに眺め、何度か
会ったことのある小早川秀秋の顔
を思い出し、見比べていた。
二人の間にしばらく沈黙があ
り、たまりかねた道春が書物の一
つを選んでいると秀忠が唐突な質
問をした。
「何があった。なぁ、何があった
のじゃ」
「お恐れながら、何がと申されま
すと」
「関ヶ原でじゃ。東軍が勝ったの
じゃろ。なのになぜ父上は負けた
ような剣幕で怒っておったの
じゃ。なにも私はわざと遅れたわ
けではない。知らせが届いた時に
はすでに間に合わなかった。しか
も父上から預かった大砲が天候悪
化のぬかるみで思うように進めな
かったのじゃ。それなのに…。誰
も本当のことを口にしようとはせ
ん」
の顔を怪訝そうに眺め、何度か
会ったことのある小早川秀秋の顔
を思い出し、見比べていた。
二人の間にしばらく沈黙があ
り、たまりかねた道春が書物の一
つを選んでいると秀忠が唐突な質
問をした。
「何があった。なぁ、何があった
のじゃ」
「お恐れながら、何がと申されま
すと」
「関ヶ原でじゃ。東軍が勝ったの
じゃろ。なのになぜ父上は負けた
ような剣幕で怒っておったの
じゃ。なにも私はわざと遅れたわ
けではない。知らせが届いた時に
はすでに間に合わなかった。しか
も父上から預かった大砲が天候悪
化のぬかるみで思うように進めな
かったのじゃ。それなのに…。誰
も本当のことを口にしようとはせ
ん」