【長編】戦(イクサ)林羅山篇
反省し改める
「負けたのです。大御所様は負け
を認められたのです。俗人は潔く
負けを認めず、そのため反省もい
たしません。だから同じ過ちを繰
り返すのです。しかし、大御所様
は違います。素直に負けを認め、
そのどこに問題があるのかを調
べ、常に反省し改めておられま
す。かつて大御所様は三方ヶ原の
戦いで武田信玄に完敗しましたが
そのおり、ご自身の苦悩した姿の
絵を描かせ、負けたことを忘れな
いように常に見ておられるのは上
様もご存知のことと思います。だ
からこそ天下を治めることができ
たのです。それが大御所様の偉大
なところなのですが、俗人にはそ
れがまったく理解できないので
す」
「そなたにはそれが分かったとい
うことか」
「あっ、いえ。私もなかなか負け
を認めることができず。同じ過ち
を繰り返す日々にございます」
「そっか、それでそなたは父上を
助ける気になったということか」
「……」
「よう分かった。これですっきり
した。そなたの言うことはもっと
もじゃ。私も父上に見習うことに
しよう。道春か良い号じゃな」
「はっ」
二人の間にあった壁が崩れるよ
うに打ち解けあった。
を認められたのです。俗人は潔く
負けを認めず、そのため反省もい
たしません。だから同じ過ちを繰
り返すのです。しかし、大御所様
は違います。素直に負けを認め、
そのどこに問題があるのかを調
べ、常に反省し改めておられま
す。かつて大御所様は三方ヶ原の
戦いで武田信玄に完敗しましたが
そのおり、ご自身の苦悩した姿の
絵を描かせ、負けたことを忘れな
いように常に見ておられるのは上
様もご存知のことと思います。だ
からこそ天下を治めることができ
たのです。それが大御所様の偉大
なところなのですが、俗人にはそ
れがまったく理解できないので
す」
「そなたにはそれが分かったとい
うことか」
「あっ、いえ。私もなかなか負け
を認めることができず。同じ過ち
を繰り返す日々にございます」
「そっか、それでそなたは父上を
助ける気になったということか」
「……」
「よう分かった。これですっきり
した。そなたの言うことはもっと
もじゃ。私も父上に見習うことに
しよう。道春か良い号じゃな」
「はっ」
二人の間にあった壁が崩れるよ
うに打ち解けあった。