【長編】戦(イクサ)林羅山篇
秀頼と淀への報告
大坂城に戻った片桐且元は豊臣
秀頼と淀に報告した。
「こたびの方広寺の一件は大御所
様には何の疑念もないとのことに
ございます。しかし、今後、この
ような些細なことでいさかいにな
らぬように秀頼様には駿府の近く
にお移りいただけないかとのこと
にございます」
秀頼よりも先に淀が質問した。
「国替えせよということか。且元
は大御所様にお会いしたのか」
「いえ。お会いすることはかない
ませんでした。お話しを伺ったの
は本多正純殿からです」
「それで、そなたはなんと返答し
たのか」
「はい。それならば秀頼様か淀殿
が度々、駿府に赴けばすむのでは
ないでしょうかと返答いたしまし
た。しかし、正純殿は先の朝鮮出
兵のことを言い出し、朝鮮、明と
の関係修復には秀頼様の大坂城退
去が必要とのことにございます」
秀頼が驚いたように且元に聞き
返した。
「今になって私に父上のしたこと
の責任をとれというのか」
「は、はい」
淀が秀頼をなだめるように言っ
た。
「まあ、且元を責めてもしかたの
ないこと。それに、それはただの
口実。大御所様に会うことができ
た大蔵卿局には朝鮮出兵の話しは
なかったが、同じようなことを言
われたようじゃ」
秀頼と淀に報告した。
「こたびの方広寺の一件は大御所
様には何の疑念もないとのことに
ございます。しかし、今後、この
ような些細なことでいさかいにな
らぬように秀頼様には駿府の近く
にお移りいただけないかとのこと
にございます」
秀頼よりも先に淀が質問した。
「国替えせよということか。且元
は大御所様にお会いしたのか」
「いえ。お会いすることはかない
ませんでした。お話しを伺ったの
は本多正純殿からです」
「それで、そなたはなんと返答し
たのか」
「はい。それならば秀頼様か淀殿
が度々、駿府に赴けばすむのでは
ないでしょうかと返答いたしまし
た。しかし、正純殿は先の朝鮮出
兵のことを言い出し、朝鮮、明と
の関係修復には秀頼様の大坂城退
去が必要とのことにございます」
秀頼が驚いたように且元に聞き
返した。
「今になって私に父上のしたこと
の責任をとれというのか」
「は、はい」
淀が秀頼をなだめるように言っ
た。
「まあ、且元を責めてもしかたの
ないこと。それに、それはただの
口実。大御所様に会うことができ
た大蔵卿局には朝鮮出兵の話しは
なかったが、同じようなことを言
われたようじゃ」