【長編】戦(イクサ)林羅山篇
家康の策
 家康と且元はしばらく黙って考
え込み、家康が喋り始めた。
「千、そうじゃ秀頼に嫁がせた千
がおる。淀殿が女なら千も女。千
に説得させれば淀殿も女として母
として堀を埋めることに同意する
かもしれん。どうじゃ」
 且元と道春は深くうなずいた。
「抜け穴については怠りなく監視
するように秀忠に申し伝えよう。
道春、そちの懸念はこれでなく
なったか」
「ははっ。恐れ入りましてござい
ます」
 三人は戦の話を離れ、和やかな
中にも緊張感のある会話を続け打
ち解けた。
 この直後、且元は密かに淀殿に
この時の会話の内容を伝えた。
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