大剣のエーテル
その時、ランバートが微かに目を見開いた。
他のエーテルの団員たちも、一瞬、動揺したように眉を寄せる。
(どういう意味…?)
フォーゼルは意味深な言葉の後、小さく言葉を続ける。
「あんたら、一派の殲滅のために地方を回っているらしいが、そんなことをしても無意味だ。俺たちの離島のアジトには、一派があらゆる場所から集めた幻夢石が山のようにあるからな。」
(影を生み出す幻夢石がある限り、一派は途絶えないってこと…?)
その時。
フォーゼルが、ちらり、と私を見た。
フードから覗く唇が、微かに動く。
「…次は…必ず……あんたを…」
(え…?)
フォーゼルはぼそり、と何かを言い残すと、ブワッ!と魔力を放出してその場から消えた。
一派の幹部が去った診察室は、しぃん、と静まり返る。
標的を逃し、イヴァンさんはゆっくりと拳銃を下ろした。
割られた窓ガラスの隙間から冷たい風が吹く。
「ノアちゃん、立てる?」
ランバートが、私に向かって手を差し伸べた。
いつもと変わらない様子のランバートは、さっきまでの動揺を隠しているようにも見える。
その手をとってよろめきながら立ち上がると、私の腕に抱かれていたフェリシアちゃんも、やっと安心したかのように頬に赤みを戻した。
「たす…かった、のか…」
その時、後ろから緊張から解放されたような掠れた声が聞こえた。
ふっ、と視線を向けると、腰を抜かしていた患者達が放心状態で座り込んでいる。
「あの…大丈夫ですか?」
私がゆっくりと彼らに歩み寄り、手を差し伸べた
次の瞬間だった。