大剣のエーテル
ランバートが、「ん、行こうか」とフェリシアちゃんに手を取った。
その時、彼女は「待って!」と声を上げる。
くりくりとした大きな瞳が私をとらえ、フェリシアちゃんはにっこりと微笑む。
「お姉ちゃん!さっき、私を守ってくれてありがとう!」
無邪気な笑顔に、とくん、と胸が音を立てた。
じんわりと広がる温かな感情は、ゆっくりと私の心を満たしていく。
私が笑って頷くと、フェリシアちゃんはランバートに手を引かれて診療所を後にした。
(私が、お礼を言われる日が来るなんて。)
「ノア。」
感謝の言葉の余韻に浸っていると、ふいに名前を呼ばれた。
はっ!として振り返ると、ルタさんはガタ、と立ち上がり、救急箱を手に歩き出す。
「ここじゃあ、環境が悪い。上の部屋で治療するから、さっさとついてきて。」
「は、はい。」
いつの間にか、ちゃんと名前を呼ばれるようになっている。
私は、にやける顔を抑えながら、すたすたと歩いていく白衣の彼を追いかけたのだった。