大剣のエーテル
背中側から聞こえたため顔を見ることは出来なかったが、無愛想なセリフはどこか優しい。
遠回しな言い方だが、私は彼に認められたということだろうか。
「あの、ルタさん。治療してくださって、ありがとうございます……」
「“ルタ”。」
お礼を口にした瞬間。
彼は私の言葉を遮ってそう言った。
はっとしたその時。
ルタさんはふわり、と私の肩にシャツをかけ、言葉を続ける。
「わざわざ敬語とか、さん付けとか、しなくていいから。気ぃ使われると鬱陶しい。あんた、イヴァンにもタメ口でしょ?」
ぱちぱち、とまばたきをして振り返ると、彼はいつもの無愛想な表情で私を見た。
透き通る碧の瞳が私を映す。
「あんたも、ランバートのトラブルに巻き込まれた1人なんでしょ。当分は一緒にいることになりそうだし…怪我くらいならいつでも診てあげるからさ。」
まるで、いつも警戒していたハリネズミが、そっと寄り添ってきたような。
トコトコと歩み寄ってきたような、そんな感覚。
「あ、ありがとう…、ルタ。」
「うん。」
白衣の彼は、私の言葉にわずかに口角を上げて頷いた。
初めて向けられた彼の微笑みは、私の心臓を鷲掴みにするには十分だった。
(ず、ずるいよ、このお医者さん…!)