大剣のエーテル
ウーッ!ウーッ!ウーッ!
突然、廊下にけたたましいサイレンが鳴り響いた。
「っな、なんスか!一体?!」
動揺したハロルドさんが声を上げたその時
廊下に設置されたスピーカーから焦ったような隊員の声が聞こえた。
その放送の内容に、エーテルの団員が言葉を失う。
『緊急事態発生!緊急事態発生!取り調べ室で尋問を受けていたエーテルのロルフが逃走した模様!』
「「「「「っ!!」」」」」
その場にいた全員が目を見開く。
(と、逃走?!取り調べを受けているのに、そんなことが出来るの?)
ここにはレガリアの隊員が山ほどいる。
自由に動き回れるなんて、何かがおかしい。
するとその時。予想をはるかに上回る放送がレガリア本部に響き渡った。
『なお、隊員はヘタに手出しをしないように!…エーテルのロルフは本部長を人質に取っている!』
「「はぁッ?!!!!!」」
保護者組が声を上げた。
ランバートは予想外の展開に、ぷっ!と吹き出している。
私がぱちぱちとまばたきをしていると、イヴァンさんは怒りに火がついたように低く唸った。
「…あの馬鹿…!騒ぎを大きくしやがって…ッ!」
「…“本部長を人質に”…って…何やってんの、あの単細胞。組織が違うとはいえ、本部長は仮にもエーテルの上司だよ?」
怒りを通り越して呆れた様子のルタもそう続ける。
ハロルドさんといえば、「…さすがッス、兄貴…」とわけのわからない羨望の眼差しをスピーカーに向けていた。
「くそ、仕方ねぇ…予想通り事件が起きた以上、この展開を良いように捉えないとやってられない。」
イヴァンさんは、そう呟いて私たちに指示を飛ばす。
「おい、お前ら。レガリアの追っ手よりも先にあの悪ガキをとっ捕まえるぞ。…何としてでもな…!」