大剣のエーテル
*問題児たちの脱獄劇
「…マジかよ。」
ロルフの無意識に出たような声が、ガラスの壁に反響した。
冷たく硬い壁は、押しても引いてもビクともしない。
壁が透明であるため、向こう側が透けて見えてはいるが、誰一人として助けてくれそうな隊員たちの姿はなかった。
「…あは。ごめ……」
「“ごめん”で済んだらエーテルはいらねぇんだよ!!」
イヴァンさんの怒号に耳を塞ぐランバート。
ルタは死んだ魚のような瞳をして「…ありえない。普通あそこでコケる?フェリでも50メートル走くらい走れるよ。」と、ガラスの壁を見つめている。
(出られなくなっちゃった…。)
言葉にすれば簡単だが、それはつまり、
“絶望”を意味していた。
そんな時、ランバートとロルフは二人して本部の壁を叩いている。
「…何やってんの。そんなことしたって、隊員はみんな東の塔に向かったんだから、助けなんて来ないよ。」
ルタが冷たく言い放つと、二人は同時に答える。
「いや、この壁を壊したら出られるかなって思ってさ。」
「そうだ。俺が火力マックスでバーニングしてみるか!」
「やめろ阿呆ども!お前らの破壊力じゃあ、本部の壁どころか建物ごと崩壊する。」
イヴァンさんはそう怒鳴り、苛立たしげにウェーブのかかった漆黒の髪を搔きあげた。
私は、エーテルたちに向かって尋ねる。
「レガリアの人たちが事件を解決して、この分厚い壁が上がるのを待つの?」
すると、ルタがため息をつきながら低く答えた。
「いや、そんなの待ってられない。逆に早くここから出ないと、本部を爆弾魔に爆破されたら俺たちまで巻き込まれる。」
(…じゃあ、一体どうしたら…)
途方に暮れて不安が胸にこみ上げたその時。
ぽつり、とランバートが呟いた。
「…やっぱり、壁を壊すしかないか。」