大剣のエーテル

その場にいた誰もが目を見開いた。

殴られた当の本人でさえ、ぽかん、としている。

ランバートは、頭を下げたまま言葉を続けた。


「ロルフは、血の気が多い奴なんです。考えるよりも先に体が動いてしまうような馬鹿なんです。…でも、彼は真っ直ぐです。自分なりの正義を貫くために、敵を作りやすいだけなんです。」


ロルフが、小さく呼吸をした。

顔を上げたランバートは、男性隊員を見つめる。


「団長の俺にあなたの傷を代わる力はありませんが…、うちのロルフを許してやってくれませんか。」


「…!」


その姿は、いつものランバートと同じ人物とは思えなかった。

そこにいたのは紛れも無い“エーテルの団長”で。

私はただ、彼を見つめることしかできなかった。

時折見せる“団長の顔”は、心臓に悪い。

子どもっぽく、わんこみたいな無邪気な顔で笑うと思えば、こうして、全てを背負う大人びた顔をする。


「…団長様。こちらこそ悪かった。俺は、あなたを誤解していたようだ。」


レガリアの男性隊員は、小さく頭を下げた。

彼のランバートに対する意識が変わったようだ。

数分の会話の後。ランバートは、いつものにこやかな顔でこちらに戻る。


「ロルフ、免罪だってさ。これで堂々と本部から出られるね。」


そう声をかけたランバートに、ロルフはどこか複雑そうな顔をした。


「悪い、ランバート…。お前に迷惑をかけちまった。だけど、俺はアイツを殴ったことは謝らないぜ。」


「うん、分かってる。…ありがとな。」


< 160 / 369 >

この作品をシェア

pagetop