大剣のエーテル

(よかった。ロルフの罪が無くなって…。)


ほっ、と胸をなでおろし、エーテル達と共に本部を去ろうとした

次の瞬間だった。


ピリリリ!ピリリリ!


私たちを追いかけて来たレガリア達の通信機が音を立てた。

どうやら、本部からの連絡のようだ。

険しい顔をした隊員達が、通信機に耳を集中させている。


『緊急連絡、緊急連絡!爆弾魔が東の塔から逃走した模様!至急、外の門へ向かえ!』


(!爆弾魔が本部を出た…?!)


緊張感が辺りに立ち込めた瞬間だった。


「…!」


ランバートが何かを察したように、ぴくり、と肩を震わせた。

彼の強張った顔に心臓が鈍く音を立てる。


「ランバート…?」


一気に雰囲気を変えた彼の名を呼んだその時。

ランバートは耳を澄まさなければ聞き取れないほどのトーンで呟いた。


「…“カイ”……」


(え…?)


翡翠色の瞳が鈍く光った瞬間、ランバートは外套を翻して駆け出した。

状況を掴むもなく、ランバートは素早くイヴァンさんに指示を飛ばす。


「イヴァン達は本部を出て、街の宿屋に向かえ!誰一人として本部に近づくな!」


「!あぁ!」


見たこともない真剣な表情。

その命令は、普段の彼なら決して口にしないような強い口調だ。


(…“カイ”って…誰かの名前…?)


何かを察したようなエーテル達は、遠ざかっていくランバートの背中を無言で見つめていた。

イヴァンさんが、動揺を隠すように琥珀色の瞳をわずかに揺らして口を開く。


「行くぞ、お前ら。団長命令だ。早急にこの場を立ち去る。」


ルタとロルフは、険しい顔をして頷いた。


(…なぜか、嫌な胸騒ぎがする…)


私は、ランバートが言い残した言葉の真意を図りかね、もやもやした気持ちを抱えながらエーテル達の後に続いたのだった。

< 161 / 369 >

この作品をシェア

pagetop