大剣のエーテル
*一派事件の傷
…ちゃぽん。
エーテルの団員たちと共に宿屋へ到着すると、二階の3部屋を借りたイヴァンさんに角部屋を割り当てられた。
長く感じた1日だが、窓の外はすでに夜のとばりに包まれている。
掃除が行き届いたお風呂に浸かりながら、私は本部での出来事を思い返す。
“イヴァン達は本部を出て、街の宿屋に向かえ!誰一人として本部に近づくな!”
(あんなランバート、今まで見たことなかった。…一体、何があったんだろう。)
本部での爆弾魔事件が起きたのは昼過ぎだったというのに、空に星が輝きだした今でもランバートは帰ってきていない。
単なる爆弾魔の追跡にしては時間がかかりすぎだ。
それに、普段と違う彼の態度も心に引っかかる。
(…どこまで行っちゃったんだろう。)
不安が押し寄せるが、悶々と考えていても時間が過ぎていくだけで、宿屋の玄関の扉が開く聞こえなかった。
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ガララ…!
髪の毛を乾かし終え脱衣所を出ると、ロビーにあるソファの背もたれから、ワインレッドの髪の毛が覗いているのが見えた。
「ロルフ?」
声をかけると、はっ、とした様子のロルフがくるり、とこちらを向く。
「おー、ノア。風呂上がりか?」
「うん。」
まつ毛の長いぱっちりとした猫目が私を見つめた。
夜の空気の中に佇む姿が、昼間よりも彼の色っぽさを際立たせる。
「ロルフは、ここで何やってるの?」
「んー?美人探し。」
さらりと答えたロルフに眉を寄せると、彼は「あー、うそうそ。」と言葉を続けた。
「団長の帰りを待ってんだよ。…少し気がかりでな。」