大剣のエーテル

(…!)


どうやら、お風呂を上がった今でもランバートはまだ帰ってないらしい。

ロビーの時計に目をやると、針はもうすぐ午後8時を指そうとしていた。

ロルフは足を組んで、くしゃ、と髪の毛をかきあげている。


「あの…、ロルフ。」


私は、「ん?」と上目遣いで視線だけこちらに向けたロルフに尋ねた。


「“カイさん”って…誰なの?」


「!」


ロルフは、微かに目を見開いた。

確信をついた質問を口にした私の胸は、バクバクと音を立てている。

聞いてはいけない質問なのかと思ったが、ロルフは少しの沈黙の後、口を開いた。


「カイってのは、元エーテルの団員だった男の名前だ。昼間、本部で奴の魔力を感じた。」


(…!)


私は、動揺しながらロルフに尋ねる。


「もしかして…ランバートが今追いかけている爆弾魔が、カイさんなの…?」


薔薇色の瞳が、すっ、と、私から逸らされた。


「…それは分からねぇ。だが、その可能性は高いな。理由までは想像もつかねぇが…」


低く聞こえたその声は、曖昧な言葉とは裏腹に妙に確信めいた響きを持っていた。

だが、私には、仮にもエーテルだった人物が、爆弾魔になるだなんて信じられない。


「ロルフ。“元”エーテル、ってどういうこと?今は仲間じゃないの?」


躊躇しながらその疑問を口にすると、ロルフはまつ毛を伏せて静かに答えた。


「あぁ。カイは2年前、ランバートにエーテルを追放されたんだ。…幻夢石に手を出したせいでな。」


「!!」


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