大剣のエーテル
どくん…!!
全身が震えた。
彼の口にした言葉の衝撃に、耳を疑う。
言葉を失っていると、ロルフは「なんだ、聞いてなかったのか?」と口を開いた。
「カイはエーテルを辞めた後、幻夢石を得るために一派側に付いたんだ。エーテルに選ばれるような実力を持った魔法使いが一派に堕ちたとなると、王としては無視できないだろ。敵になったわけだからな。」
「じゃあ、国の重要危険人物になってしまったカイさんを、彼の命を救ったランバートが始末しなくてはいけなくなったってこと…?」
ロルフは、無言で頷いた。
未だに信じられない。
ランバートはその命を受けた時、一体どんな気持ちだったのだろう。
慕ってくれていた後輩であり、信頼していた仲間だった彼を標的にしなければいけない苦悩を、私は想像すら出来ない。
“どうして旅をしているの?”
“んー…、探しものがあってね。”
“それって、本?”
“本当にそうだったら、きっとイヴァンは俺について来てはくれないだろうね。”
彼と出会ったばかりの頃、私が旅について尋ねた時の会話が蘇る。
ランバートは、深く語らなかった。
聞いてはいけないような気がしていた。
私はランバートにたくさん救ってもらったのに、私は彼の抱えている悲しみの大きさに気づけなかった。
すべてを笑顔で隠した彼は、誰よりも深い傷を負っていたのに。