大剣のエーテル

「…ノアちゃん?どうしたの?」


子どもをあやすような穏やかな声が頭上から聞こえる。

私は、そっ、と抱き込むように背中に回された彼の腕を感じながら、か細く答えた。


「…ランバートが、いなくなっちゃうような気がして…」


「…どうして?俺はちゃんとここにいるよ。」


私を落ち着かせるように背中を撫でたランバートは、息を含む声で私に囁いた。


「ごめんね、遅くなって。事後報告をしに、本部に寄ってきたんだ。そしたらハロルドが傷の手当てをしてくれてね。かすり傷なのに、包帯でぐるぐる巻きにされてさ。あはは、参ったよ。」


ランバートの胸にうずめていた顔を上げると、彼の言った通り首元に白い包帯が見える。

私の体に回された腕にも巻かれているようだ。


「爆弾魔と、戦ったの…?」


「んーん。これは昼間、ガラスの破片でやられた傷だよ。…敵には逃げられちゃった。」


ほっ…、と、体の力が抜ける。

安心感が込み上げ、私はランバートが目の前にいる実感が欲しくて、彼を抱きしめる腕に力を込めた。

それを感じ取ったランバートが、少し戸惑ったような声で苦笑しながら私に尋ねる。


「えーっと…ノアちゃん。急に甘えんぼだね?抱きついてくれるのはすごく嬉しいけど…そんなに俺のことを心配してくれてたの?」


「心配だったよ…!すごく、すごく…!」


「…!」


私を撫でる彼の指はどこまでも優しい。

この温もりが消えてしまうかもしれないという考えが一瞬でも頭をよぎった瞬間、私は苦しくてたまらなかった。

ランバートの声を聞いて、この感触を確かめるまで、気が気じゃなかった。

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