大剣のエーテル

「…ひとつ、聞いてもいい…?」


私の言葉にこちらを、ふっ、と見たランバートに、躊躇しながら尋ねる。


「2年前の事件の後…ランバートとカイさんの間に、一体、何があったの?」


「…!」


「ロルフから、カイさんは魔法陣を失った後もエーテルとして任務に当たり続けたって聞いたわ。…それで、突然、ランバートがカイさんを追放した、って…」


ガタガタと、宿屋の窓が音を立てる。

風が強く吹き付け、外の街路樹が葉を揺らした。

月明かりに照らされた木々が、ランバートの頰に陰を落とす。

わずかに顔を伏せた彼は、小さく答えた。


「…俺が、口を滑らせたんだよ。」


「え…?」


はっ、として彼を見つめると、ランバートは顔を伏せたまま言葉を続ける。


「魔法陣を失ったカイは、元々体術にも優れていたとはいえ、丸腰で魔法使いの相手をするのには限界があった。俺のように武器を使うことには慣れていなかったカイは、今まで通りに戦えなくなった。」


ざわざわ、と木々が揺れる。


「カイは、任務を遂行する力を失った自分を責め、かつての自分との落差に苦しんだ。…あの時のあいつは…今にも壊れてしまいそうだった。」


ロビーでのロルフの言葉が蘇る。


“カイは、その後もエーテルとして任務に当たり続けたが、魔力を失った代償は大きくてな。生きながら死んだような顔をしてた。”


(誰の目から見ても、カイさんはボロボロだったんだ。)


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