大剣のエーテル

語られた真実は、想像以上に痛ましいものだった。

彼らの複雑に絡み合った誤解の糸が、解けないまま今に至っている。


「…カイさんは、魔法陣を砕いたランバートのことを…、恨んでいるの…?」


「どうだろうな。…でも、俺は、恨まれても仕方がないことをした。」


ランバートは、静かにそう言った。

その口調は、どこか覚悟を決めているようだった。

まるで、復讐を受けいれているかのように落ち着いていて、怖いくらいだ。


(…やっぱり、ランバートはカイさんと決着をつけた後…命を断とうとしているの…?)


ぞくり、と震えが走った。

彼の瞳に宿る翡翠の光が、やけに心もとなく感じる。

まるで、今にでも消えてしまいそうな…


「ノアちゃん…?」


無意識に彼の外套を掴んでいた。

小さく目を見開いたランバートは、私を見つめる。

すがりついているようにも見える私の仕草に、彼は困ったように微笑んだ。


「…どうしたの?」


私の心を尋ねるように小さく首を傾げたランバートは、月明かりのように優しい。

ざわざわと騒めく感情を、きっとランバートは察している。

きっと、私がこれから口にする言葉も、彼はすでに分かっているんだ。


「…ランバート…」


「ん…?」


「いなくなったり、しないよね…?」


「…うん。俺はずっと、ノアちゃんの隣にいるよ。」


< 179 / 369 >

この作品をシェア

pagetop