大剣のエーテル
「お?まさか、“大人のイケナイ読み物”か?2年の間にずいぶん成長したじゃねぇか、ランバート。」
そう、ニヤニヤとからかうように言ったのはロルフである。
(…!“大人のイケナイ読み物”?あれ、全部?)
「…ばか。ちょっと、慎みなよそのネタは。もう男だけの集団じゃないんだからさ。」
ルタが私をちらり、と見てそう言った。
気遣われているのかと思うと無性に恥ずかしくなる。
その時、焦ったようなランバートの声が辺りに響いた。
「違う違う!誤解しないでねノアちゃん!そもそも、これは本じゃない。変なこと言うなよ、ロルフ…っ!」
ドサ!と地面に置かれたランバートの袋から、
“ゴト…”、と何かが擦れる音がする。
それは彼の言う通り、本から出る音ではない。
確かに、袋の中は別の何かが入っているようだ。
(…なんだかほっ、としちゃった。)
「何だ。違うのかよ」とぼそり、と呟いたロルフに眉を寄せたランバートは、ごほん、と咳払いをして私たちに指示を出した。
「これから一派のアジトに向かうけど、ひとまず、ルタの故郷の町を目指して進むことにする。…ここまではいいね?」
頷いた私たちにランバートは続ける。
「じゃあ今から、“最短ルート”で目的地に向かうから、みんなは何も心配せずに付いてきてね。」
「「心配しかない。」」
保護者組がじとっ、とした視線をランバートに向けながらそう言った。
ロルフだけは好奇心に駆られたようにワクワクしている。
イヴァンさんがランバートに低く尋ねた。
「地図を見る限り、最短ルートなんてないはずだが?」
「ちょっとした“裏技”を使うんだよ。大丈夫っ!エーテルが揃っていれば、今日中には到着できるからさ。」
(今日中に…?!国の端から端までを?)
ルタが、ランバートをじっ、と見つめながら口を開く。
「ねぇ。“裏技”って、何する気?」
「あはは。行ったらわかるよ。」
納得しきれていないようなイヴァンさんとルタをよそに、ランバートは荷物を背負って歩き出したのだった。