大剣のエーテル
「…ったく…、後で雪の中から回収してやるか…」
雪原に埋もれたロルフを眺めながら、イヴァンさんがぼそり、と呟いた。
その時、ふぅ、と息を吐いたお婆さんが、ぱっ、と私の方を見た。
どきり、と胸が音を立てる。
「…で、あんたもエーテルなのかい?」
「!いえ、私は…」
お婆さんの瞳が私をとらえる。
視線を逸らさずに、私は続けた。
「私はノアです。団員ではないのですが、エーテルの旅に同行させてもらっています。ルタには色々お世話になっていて…」
すると、お婆さんはカタカタと車椅子で私に近づき、そっ、と私の手を取った。
(…!)
じんわりと温かいシワだらけの手が、ゆっくりと私の手に重なる。
「…どうやら、“訳あり”のようじゃな。魔力の持たぬ者を見るのは初めてじゃが…。…苦労をしてきたんだろう?」
「!」
穏やかな口調は、この世界にとって異質な私を受け入れているようだった。
かけられた労りの言葉に、ふっ、と張り詰めていた緊張が解ける。
(私のことを…人として認めてくれた…)
触れただけで私に魔力が宿っていないことを悟るお婆さんは、どうやら上級の魔法使いのようだ。
「…さて、そういえば私の自己紹介がまだだったな。」
お婆さんは、すっ、と私の手を離して車椅子の肘掛けに腕を置く。
「私はこの教会で子らの面倒を見ている一端の魔法使いじゃ。周りの者からは“ババ様”と呼ばれておる。…以後、よろしくな。」